なまえ

自分を否定したあの日

私は私のなまえをなくしたのだと

ずいぶんと後になって気づいた

 

ありのままの自分を受け入れるということは

そんなに容易いことではない

自分の経験は自分しか知らない

他人と比べようがないだとしたら

たった独りで受け入れるよりないのだ

そんなこと恐ろしくそうそう容易くできやしないやしない

まして10ばかりの子には

 

腹をくくれたのは30年も経てのことだった

それももうこれ以上どうしようもなくなってから

これ以上自分を誤魔化して生きていくことができなくなったから

虚しくなったからだ

それで自ら蹴飛ばそうと思った自分自身をね

自殺するとかそういった具体的なことじゃなかったけど

とにかくただ単純に蹴飛ばそうと

そう思った

 

その前に10歳の時に経験したあの原点に戻ろうと

もうそれしか残ってなかった

腹を括るよりもう何も残ってはいなかった

 

気づいたら八ヶ岳の麓を歩いてる自分がいた

そしてその先にあの方がいた

私を初めて受け入れてくれた人

そうだよと言葉でではなく全霊で受け入れてくれた人が

 

やっと息ができた

その日から

私は自分の名を取り戻し始めた

生まれる以前からの名を