鎮守の森

森へ

木はまねく

 

森へ

木はまねく

 

さらに深奥(おく)へ

木はまねく

 

森の真ん中

黄金色(きんいろ)に透きとおって

木はあった

 

木は語った

木が気であった

太古の昔のことを

 

人の歓喜(喜び)の源(もと)であった日々を

人の呼吸(いき)の元型(もと)であった日々を

 

木は深い沈黙に入った

悲哀(かなしみ)のうちに

慟哭(いたみ)とともに

恋慕(こいこがれ)を秘めて

 

わたしは聴いた

(人の)不信の起因(おこり)を

(人の)叛逆(さからい)の歴史を

 

7日目の朝

わたしは静かに

木にひれふした