わたしの浦島太郎物語

聖書の中で”わたし”という方に会いたいと思った。

小学高学年だった。

ただそう思った。

そして私『I』は”わたし”『I  AM』に会った。

”わたし”は私の深奥に在った。

 

私の命そのものだった。

そこは死の陰すらなく命に充ち満ちていた。

 

ある日私は気づいた。

周りにその世界を知ってる人はだれもいないということに。

なんだか自分だけが違うということに。

思春期を向かえていた。

自分に起きたこと自分が観た世界を理解しようとした。

玉手箱を開けたのだ。

 

それまでの世界は煙と化し

生命はたちまち萎えた。

竜宮城を遠く離れ泣きながら独り彷徨った。

どこにも真の食べ物はなく喉はひりつき渇いた。

 

野たれ死にそうになったそのときようやく決断した。

あの世界にも一度帰ると。

”わたし”という方がそこに待っていた。

ふたたび私は命を取り戻した。